彼を知り己を知れば百戦して殆うからず(孫子)

孫子 彼を知り己を知れば百戦して殆うからず

彼を知り己を知れば百戦して殆うからず
孫子の名言

今回は、孫子の兵法の一節で名言の一つでもある「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず(かれをしり おのれをしれば ひゃくせんしてあやうからず)」という言葉について見ていきたいと思います。

「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」の一節

勝を知るに五あり。

戦うべきと戦うべからざるとを知る者は勝つ。衆寡の用を識る者は勝つ。上下の欲を同じくする者は勝つ。虞をもって不虞を待つ者は勝つ。将の能にして君の御せざる者は勝つ。

この五者は勝を知るの道なり。ゆえに曰わく、彼を知り己を知れば百戦して殆うからず。彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必らず殆うし。

「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」は、孫子の兵法の第三章「謀攻篇」で出てくる一節です。この「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」の一節を現代語に訳してみましょう。

「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」の現代語訳

勝利を知るのに五つの要点がある。

戦うべき時と戦ってはならない時とを知っている者は勝つ。大軍と寡兵それぞれの用兵をわきまえている者は勝つ。上下の意思統一ができている者は勝つ。自分たちは十分に準備し、準備していない敵を待ち受ける者は勝つ。将軍が有能であり、君主が余計な干渉をしなければ勝つ。

この五つの要点が、勝利を知る道である。だから「敵の実情を知り、己の実情を知っていれば、百回戦っても敗れることがない」と言うのだ。敵を知らず自分ことのみを知っている状態なら、その時次第で勝ったり負けたりする。敵を知らずに自分のことも知らなければ、戦う度に必ず敗れる危険がある。

これが現代語訳になります。

「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」の解説

「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」というのは孫子の中でも有名な言葉の一つですので、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

「敵の実情を知り、己の実情を知っていれば、百回戦っても敗れることがない」という意味ですが、百戦して百勝ではなく、百戦して敗れることがないというあたりが孫子らしいところでしょう。

自らが不利と知れば、雌雄を決せず逃げ回り、有利な態勢となる時期を待つという選択肢も持っているわけです。

勝てるかどうかを慎重に精査し、勝てるとみれば戦い、勝てないとみれば戦いを避ける。このことが「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」のポイントだと言えるでしょう。勝負は、やみくもに戦っても勝てるものではないのです。

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