しばしば賞するは苦しむなり

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孫子の兵法

しばしば賞するは苦しむなり
孫子の名言

今回は、孫子の兵法の一節で名言の一つでもある「しばしば賞するは苦しむなり」という言葉について見ていきたいと思います。

「しばしば賞するは苦しむなり」の一節

杖つきて立つは、飢うるなり。汲みてまず飲むは、渇するなり。利を見て進まざるは、労るるなり。鳥の集まるは、虚しきなり。夜呼ぶは、恐るるなり。軍の擾るるは、将の重からざるなり。旌旗の動くは、乱るるなり。吏の怒るは、倦みたるなり。馬を粟して肉食するは、軍に糧なきなり。缻を懸けてその舎に返らざるは、窮寇なり。

諄諄翕翕として、徐に人と言うは、衆を失うなり。しばしば賞するは苦しむなり。しばしば罰するは困しむなり。先に暴にして後にその衆を畏るるは、不精の至りなり。来たりて委謝するは、休息を欲するなり。兵怒りて相迎え、久しくして合せず、また相去らざるは、必ず謹みてこれを察せよ。

「しばしば賞するは苦しむなり」は、孫子の兵法の第九章「行軍篇」で出てくる一節です。この「しばしば賞するは苦しむなり」の一節を現代語に訳してみましょう。

「しばしば賞するは苦しむなり」の現代語訳

兵士が杖をついて立っているのは、全軍が飢えている。 兵が水を見つけた時、真っ先に水をくんで飲むのは、その軍が飲み水に困っている。 利益がある状況で進撃してこないのは、兵が疲労している。鳥がたくさん集まっているのは、その陣はもぬけの殻である。夜に叫ぶ声がするのは、兵が臆病で怖がっている。軍営の騒がしいのは、将軍に威厳がない。旗が落ち着かないのは、軍が乱れている。役人が腹を立てているのは、軍がくたびれているからだ。 馬に兵糧米を食べさせ、兵士が軍馬を食べ、軍の鍋釜の類はみな打ち壊して、その幕舎に帰ろうとしないのは、切羽詰まった敵である。

指揮官がねんごろに兵士たちを諭しているのは、みんなの心が離れている。むやみに賞を与えているのは、士気が上がらず困っている。むやみに罰しているのは、その軍が疲れている。最初、乱暴に扱っておきながら、兵士たちの離反を恐れて下手に出るのは、考えの行き届かない極みである。わざわざ贈り物を持ってきて休戦を申し出るのは、しばらく軍を休めたいからだ。敵軍がいきり立って向かってきたのに、いつまでたっても戦端を開かず、撤退もしない時は、注意深く状況を観察すべきである。

これが現代語訳になります。

「しばしば賞するは苦しむなり」の解説

しばしば賞するは苦しむなり」は孫子の「行軍篇」の中にある言葉の一つで「むやみに賞を与えているのは、士気が上がらず困っている状態である」と言う意味です。

本来、賞を与えるのは、それに見合った活躍があればこそですが、中小企業を見ていると、士気を上げるために賞を乱発する経営者がいます。単純に言えば、エサで釣ってやる気を出させるということになりますが、それでは思ったような成果は上がりません。

賞罰にはルールがあり、そのルールに沿って運用して初めて価値が生まれ、士気の向上につながるということを忘れてはいけません。

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