治をもって乱を待つ
孫子の名言
今回は、孫子の兵法の一節で名言の一つでもある「治をもって乱を待つ」という言葉について見ていきたいと思います。
「治をもって乱を待つ」の一節
ゆえに三軍には気を奪うべく、将軍には心を奪うべし。このゆえに朝の気は鋭、昼の気は惰、暮の気は帰。ゆえに善く兵を用もちうる者は、その鋭気を避けてその惰帰を撃つ。これ気を治むる者なり。
治をもって乱を待ち、静をもって譁を待つ。これ心を治むる者なり。近きをもって遠きを待ち、佚をもって労を待ち、飽をもって饑を待つ。これ力を治むる者なり。正々の旗を邀うることなく、堂々の陳を撃つことなし。これ変を治むるものなり。
「治をもって乱を待つ」は、孫子の兵法の第七章「軍争篇」で出てくる一節です。この「治をもって乱を待つ」の一節を現代語に訳してみましょう。
「治をもって乱を待つ」の現代語訳
こうして敵の軍隊の気力を奪い、敵の将軍の気力を奪わなければならない。朝は気力が満ちているが、昼になると気力は衰え、日暮れになると気力は尽きる。だから戦上手は、敵の気力が充実した時を避け、衰えて休息を求めている時を狙う。これが敵の気力を操る者の戦い方である。
秩序だった状態で乱れた敵を攻め、落ち着いた状態で混乱した敵を攻める。これが敵の心をうまく操る者の戦い方である。また、戦場の近くで遠くから来る敵を待ち伏せ、英気を養った状態で疲れ果てた敵を攻撃し、食が足りた状態で飢えた敵を攻撃する。これが敵の力を操る者の戦い方である。さらに敵が秩序だっており、陣容も堂々としている相手に戦いを挑まない。これこそ敵の変化に従って柔軟な戦いができる者の戦い方である。
これが現代語訳になります。
「治をもって乱を待つ」の解説
負けない戦いをするのが孫子の真骨頂ですが、その条件の一つが「治をもって乱を待つ」です。
「治をもって乱を待つ」とは「自らは秩序だった状態を保ち、敵の内部が乱れるのを待つ」ことを指します。組織は秩序があれば機能しますが、内部が乱れて秩序を失った組織は脆いものです。
相対的に有利な状況になるのを待つことで、負けない確率が大きく高まるわけで、戦うタイミングを計ることの大切さを「治をもって乱を待つ」の一節は私たちに伝えてくれています。