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高きに登りてその梯を去るがごとし
孫子の名言
今回は、孫子の兵法の一節で名言の一つでもある「高きに登りてその梯を去るがごとし」という言葉について見ていきたいと思います。
「高きに登りてその梯を去るがごとし」の一節
軍に将たるのことは、静もって幽、正もって治、よく士卒の耳目を愚にし、これをして知ることなからしむ。その事を易え、その謀を革め、人をして識ることなからしめ、その居を易え、その途を迂にし、人をして慮ることを得ざらしむ。帥いてこれと期すれば、高きに登りてその梯を去るがごとし。
帥ひきいてこれと深く諸侯の地に入りて、その機を発すれば、舟を焚き釜を破り、群羊を駆るがごとし。駆られて往き、駆られて来たるも、之くところを知ることなし。三軍の衆を聚め、これを険に投ず。これ軍に将たるの事と謂うなり。九地の変、屈伸の利、人情の理、察せざるべからず。
「高きに登りてその梯を去るがごとし」は、孫子の兵法の第十一章「九地篇」で出てくる一節です。この「高きに登りてその梯を去るがごとし」の一節を現代語に訳してみましょう。
「高きに登りてその梯を去るがごとし」の現代語訳
将軍の仕事は、もの静かで思慮深く、公明正大で自分をよく律しなければならない。士卒の耳目をうまくくらまして、軍の目的を知らせないようにする。 内容を様々に変え、その策謀も新しくして、兵たちに気づかれないようにする。駐屯地を転々と変え、その行路を迂回し、兵たちに推測されないようにする。軍を率いて決戦する時には、高いところへ登らせてから梯子を外すように、戻りたくても戻れないようにする。
深く敵の領土に入り込んで戦う時には、羊の群れを追いやるように自在に采配する。兵たちは追いやられてあちこちと行き来するが、どこに向かっているかは誰にもわからない。全軍の大部隊を集めて、決死の体制で危険な土地に投入するのは、将軍たる者の仕事である。九通りの地勢に応じた変化、軍の分散と集中、人情の道理について、将軍は充分に考慮しなければならない。
これが現代語訳になります。
「高きに登りてその梯を去るがごとし」の解説
「高きに登りてその梯を去るがごとし」は孫子の「九地篇」の中にある言葉の一つで「高いところへ登らせてから梯子を外すようだ」という意味です。
現代でも「梯子を外す」という言葉がありますが、この「高きに登りてその梯を去るがごとし」が語源になっていると言われています。
味方の兵を戦わざるを得ない状況や逃げ出せない状況に追い込み、最後に梯子を外して決死の覚悟を持たせることが指揮官の仕事だと孫子は説いています。組織には様々な人がいますが、それを一つにまとめ上げ、同じ方向に向かせることの重要性は現代のビジネスシーンでも同じです。