人の耳目を一にする
孫子の名言
今回は、孫子の兵法の一節で名言の一つでもある「人の耳目を一にする」という言葉について見ていきたいと思います。
「人の耳目を一にする」の一節
軍政に曰く、「言うともあい聞えず、ゆえに金鼓を為る。視すともあい見えず、ゆえに旌旗を為る」と。
それ金鼓・旌旗は人の耳目を一にするゆえんなり。人すでに専一なれば、すなわち勇者もひとり進むことを得ず、怯者もひとり退くことを得ず。これ衆を用うるの法なり。ゆえに夜戦に火鼓多く、昼戦に旌旗多きは、人の耳目を変うるゆえんなり。
「人の耳目を一にする」は、孫子の兵法の第七章「軍争篇」で出てくる一節です。この「人の耳目を一にする」の一節を現代語に訳してみましょう。
「人の耳目を一にする」の現代語訳
古い兵法書には「口で言っても聞こえないから鐘や太鼓を使い、指し示しても見えないから旗や幟を使う」とある。
そもそも鳴り物や旗は兵士たちの行動を統一させるもので、軍隊がすでに一つにまとまっているなら、勇敢な者が一人だけ突出することはなく、臆病な者が一人だけ退くことはない。これが大部隊を運用する方法である。だから夜の戦には松明と金鼓を多く使い、昼の戦には旗や幟を多く使う。鐘や太鼓や旗や幟は、人の目や耳を統一するためのものなのだ。
これが現代語訳になります。
「人の耳目を一にする」の解説
「人の耳目を一にする」とは「一人一人の行動を統一する」という意味です。
古の戦争も現代のビジネスも戦いに勝つためには、組織力が試されます。いかに規模の大きな会社であっても、一人一人が別々のことを考え、別々の行動をしてしまえば、勝ち残ることはできません。
そこで出てくるのが「人の耳目を一にする」こと。
現代の企業経営であれば、企業理念であったり、年度方針であったり、部や課の活動方針といったものが「金鼓・旌旗」にあたるものになるでしょう。企業理念・年度方針・活動方針を軽視する人を目にしますが、大きな組織であればあるほど、企業の実力の発揮は難しいと言えるでしょう。