この六者は地の道なり
孫子の名言
今回は、孫子の兵法の一節で名言の一つでもある「この六者は地の道なり」という言葉について見ていきたいと思います。
「この六者は地の道なり」の一節
地形には、通なる者あり、挂なる者あり、支なる者あり、隘なる者あり、険なる者あり、遠なる者あり。
われもって往くべく、彼もって来たるべきを通という。通なる形には、まず高陽に居り、糧道を利してもって戦わば、すなわち利あり。もって往くべく、もって返り難きを挂という。挂なる形には、敵に備えなければ出でてこれに勝ち、敵もし備えあらば出でて勝たず。もって返り難くして、不利なり。われ出でて不利、彼も出でて不利なるを支という。支なる形には、敵、われを利すといえども、われ出ずることなかれ。引きてこれを去り、敵をして半ば出でしめてこれを撃つは利なり。隘なる形には、われまずこれに居らば、必ずこれを盈たしてもって敵を待つ。もし敵まずこれに居り、盈つればすなわち従うことなかれ、盈たざればすなわちこれに従え。険なる形には、われまずこれに居らば、必ず高陽に居りてもって敵を待つ。もし敵まずこれに居らば、引きてこれを去りて従うことなかれ。遠えんなる形には、勢い均しければもって戦いを挑み難く、戦えばすなわち不利なり。
およそこの六者は地の道なり。将の至任、察せざるべからず。
「この六者は地の道なり」は、孫子の兵法の第十章「地形篇」で出てくる一節です。この「この六者は地の道なり」の一節を現代語に訳してみましょう。
「この六者は地の道なり」の現代語訳
戦場の地形には、四方に開けた地形、障害物が多い地形、枝分かれした地形、 道幅が狭まった地形、高く険しい地形、両軍の陣地が遠く離れているものがある。
- 味方も敵も簡単に来れる場所は「四方に開けた地形」である。ここでは、敵より先に日当たりの良い高台に布陣し、補給線を確保して戦えば、有利になる。
- 行くのは簡単だが引き返すのが難しいのが「障害物が多い地形」である。ここでは、敵に備えがなければ勝てるが、備えがあれば勝てず、再び引き返すのも困難で、不利である。
- 味方も敵も不利なのが「枝分かれした地形」である。ここでは、敵の挑発に乗って進軍してはならない。軍を後退させて、敵の半数が分岐点を過ぎて進出したところを攻撃するのが有利である。
- 「道幅が狭まった地形」では、味方が先に占拠していれば、兵力を密集させておいてから、敵を待ち受ける。もし、敵が先に占拠していて、しかも敵の兵力がその隘路上に密集している場合には、そこへ攻めかかってはならない。たとえ敵が先に占領していても、敵の兵力がまばらな場合には攻めかかれ。
- 「高く険しい地形」では、味方が先に占拠していれば、必ず高地の南側に陣取って、敵を待ち受ける。もし、敵が先に占拠している場合には、軍を後退させてその場を立ち去り、攻めかかってはならない。
- 「両軍の陣地が遠く離れている」場合、戦力が互角な場合は、戦いを仕掛けるのは困難である。無理に戦えば、不利になる。
これら六つの事柄は、地形についての道理である。将軍の最も重大な任務であるから熟慮しなければならない。
これが現代語訳になります。
「この六者は地の道なり」の解説
「この六者は地の道なり」は孫子の「地形篇」の中にある言葉の一つですが、この一節で地形における六つの道理を説明しています。
具体的に、地形の違いによって注意すべき点を列挙し、取るべき戦術を解説していますが、いずれも理路整然とした内容で 2500年以上前にこの内容が書かれたことに驚かされます。