四軍の利
孫子の名言
今回は、孫子の兵法の一節で名言の一つでもある「四軍の利」という言葉について見ていきたいと思います。
「四軍の利」の一節
四軍の利は、黄帝の四帝に勝ちしゆえんなり。
およそ軍は高きを好みて下きを悪み、陽を貴びて陰を賎しむ。生を養いて実に処り、軍に百疾なし。これを必勝と謂う。丘陵隄防には必ずその陽に処りてこれを右背にす。これ兵の利、地の助けなり。上に雨ふりて水沫至らば、渉らんと欲する者は、その定まるを待て。
「四軍の利」は、孫子の兵法の第九章「行軍篇」で出てくる一節です。この「四軍の利」の一節を現代語に訳してみましょう。
「四軍の利」の現代語訳
四種の地勢で上手く戦ったからこそ、黄帝は四方の敵に打ち勝ったのである。
布陣するには、高地がよく、低地は避けるべきである。 日当たりの良いところを選び、日当たりの悪い所は避ける。健康に留意して、水や草の豊かな場所に布陣し、軍隊に疾病が起こらないのを必勝の軍と呼ぶ。丘陵や堤防などでは、日当たりの良い場所に布陣し、丘陵や堤防が背後と右手となるようにする。そうすることで戦いにプラスに働き、地形の助けを受けることができる。上流が雨で、川が泡だって流れているときは、洪水の恐れがあるから、その流れの落ち着くのを待ってから渡河するべきである。
これが現代語訳になります。
「四軍の利」の解説
「四軍の利」は孫子の「行軍篇」の中にある言葉の一つで、四つの地勢における布陣の留意点のことです。
「四軍の利」とは、具体的には、
- 山を越えるには谷沿いに進み、敵よりも高い位置を占め、戦う時に低地から高地へ攻め上ってはいけない。これは山岳地帯で戦う時の注意である
- 川を渡り終えたならば、必ずその川から遠ざかる。敵が川を渡って攻撃してきたときには、敵軍がまだ川の中にいる間に迎え撃ったりせず、敵兵の半数を渡ったところで攻撃するのが有利である。川の近くで戦う場合、上流の位置を占め、下流から川の流れに逆らってはならない。これは河川の近くで戦う時の注意である
- 沼沢地を越える場合には、素早く通過するようにして休息してはならない。やむをえず、沼沢地の中で戦う場合は、水草の近くで森林を背に配して布陣せよ。これは沼沢地で戦う時の注意である
- 平地では、足場のよい平坦な場所を占めて、高台を背後と右におき、低地を前方に配して布陣せよ。これは平地で戦う時の注意である
になります。
有利な態勢と不利な態勢を知り、有利な態勢を保つことが戦いに負けない秘訣だという点は、現代のビジネスシーンでも通用する部分だと思います。